大好きな礼真琴さんの、タカラジェンヌとしての最後のレビュー「エスペラント!」、ムラに遠征し観劇してきました。
舞台の上で光を放つその一瞬一瞬に、気品と圧倒的な帝王感、そして美しさが宿っていて、涙が込み上げる瞬間がいくつもありました。
それと同時に、舞空瞳さんが「隣に居ない」ことに、その「欠けた大切なピース」がどれほどのものであったかを、まざまざと感じさせるレビューでもありました。
この作品は、レビューではあるけれど、もう一つは礼真琴というタカラジェンヌの、最後の物語——つまりエピローグだったのだと感じます。
ティアラアスール・ディスティーノから始まり、最高のトップコンビのラストをみせてくれて、「ANTHEM」で礼真琴さんの魅力を最大限以上にみせてくれて、そして最後の最後は「タカラジェンヌ」として卒業していく…
だから、「エスペラント!」は壮大な礼真琴さんの「サヨナラショー」のエピローグなのかもしれない、と感じました。


欠けたピースが語りかけてくるもの
舞空瞳さんが退団して、今回のショーの中に「なこちゃんが物理的に存在しない」ことを、まざまざと感じさせられました。
本当に、その欠けたピースが大きすぎて…。
あまりにもショースターだった、圧倒的なヒロイン力のある舞空瞳さんが欠けたレビュー。正直、自分が想像していた以上に喪失感は凄かったです。
でも、こっちゃんはやっぱりどこまでも光り輝いていたし、どの場面も本当に美しかった。
そして…
こっちゃん1人を輝かせるというよりも、「星組の仲間たちとともに、星組の仲間たちも輝かせたい」そんなこっちゃんの想いが伝わってくるようでした。
そして、宝塚歌劇へファンへ、観客への感謝の気持ちを表すような、優しく穏やかな柔らかな表情も印象的で。
バリバリに踊り、キレキレに魅せてくれるこれまでのショーとはまた違う、物語の最後を、やわらかく包み込むように舞う舞台姿だったように思います。
記憶に宿る、オマージュの気配
今回のレビューには、これまでの作品のオマージュともとれるようなシーンが散りばめられていました。
「秋の摩天楼」の場面では、ヴェルダッド!!を思い出させるトレンチ姿のこっちゃんが本当に素敵でカッコよくて。
エドワードとサンドラは、こんな風に街でデートしていたのかなぁ、みたいな素朴さと温かさが溢れていました。

くじらのお腹に入ってしまうシーンは、詩ちづるさんが人間で、こっちゃんが人形。
ヴィオレトピアやジャガービートの1場面のような世界観ではあるけれど、マシーンガールだった詩ちゃんが人間で、人形がこっちゃんに逆転していることもあって新鮮でした…が!この場面は少し違和感がありました。
せめて、素敵なヘアスタイルやしなやかな動きが伝わってくるようなお衣装なら、この場面の印象は全く変わっていたと思います。東京では、変更にならないかなぁ…なんて、お衣装さんごめんなさい、だけど初めて「本気」で思ってしまった。
「Mr.ブルー」に浮かんだ、ことなこの幻影
このレビューで最も、舞空瞳さんの登場を待ってしまったのは、「Mr.ブルー」の中詰めです。
この作品で一番と言ってもいいくらい、とてつもなくカッコいい煌めくブルーのお衣装をまとった銀髪こっちゃんの横には、パッションピンクの煌めくドレスを纏ったマーメイドプリンセス・なこちゃんが居てほしいと心から思ってしまった…(;_;)
この時の礼真琴さんは本当に海の王子様、貴公子なので、その隣にはなこちゃんがお姫様として居てほしくってね。・゜・(ノД`)・゜・。
本気で銀橋渡ってこれから登場するよね?と幻影を追ってしまいました…
ゆったりと銀橋を歩き、客席降りをするこっちゃんの姿は、まるで往年のトップスターと重なるように、悠々と堂々としていて…
あえて動きを少なくしても、ばっと「トビウオの羽根」のように煌めくマントを翻すだけで、目先を少し落とすだけで色気と場を支配するカッコよさがとてつもなく…
「青い星」に託した祈り
「青い星」は、礼真琴さんがずっと願っていた千住明さんが書き下ろされた楽曲。
美しくて、どこか切なくて、でも希望に溢れていて…。
星組生と同じお衣装で歌うこっちゃんの姿からは、トップスターとしてではなく、星組の一員として、タカラジェンヌの一員として舞台に立ち、歌う誇りが感じられて、涙が滲みました。
本当にいい曲。
東京公演に向けて、これからもっともっと深まっていくと思います。
誰も見ていない場所でも、美しさをまとって
私は2階席という遠い場所での観劇だったのですが、だからこそ、舞台奥の素敵なこっちゃんの姿を見られたのも嬉しい発見でした…!
青い星でセンターで歌った後、後方にはけたこっちゃんは、組子にお手伝いしてもらいながらあのイエローのポンチョのような衣装を脱ぎ、タップの場面に向けて白いスーツへと早着替え。
そのとき、舞台には背を向けながら、髪をさっと、でも丁寧に整える仕草が見えたんです…!
何層にも星組生が並んだシーンなので、ほとんど誰からも見えないような位置なのに、背を向けるこっちゃんの立ち方や仕草には一切の“スキ”がなく、髪の毛一本まで神経が行き届いている…。
髪を整えるその指先の動きまで、本気で綺麗…!
その後ろ姿に、「舞台で全力で生きる人」の覚悟と誇りが感じられて、胸がいっぱいになりました。
タップのシーンで泣いた、「親鳥」の姿
111期生とのタップダンスのシーンも、忘れられません。
こっちゃんが111期生の一人の手をとって踊る場面、一緒に振りを揃える瞬間、どれも胸がいっぱいになって、涙が止まりませんでした。
こっちゃんがやって見せるタップを、一斉に真似るように踊る111期生たち…
その姿を優しく眺めながら、こっちゃんが満面の笑みで「Good!」と指で合図するんです。
(その声が聞こえてくるかのようで…もう涙…。)
その一瞬に込められていたのは、未来を信じてひな鳥たちに託す、トップスターのやさしいエールでした。
静けさに宿った、最後のデュエットダンス
フィナーレでの礼真琴さんと、退団者や組替えを控えた仲間たち、そしてありうたコンビとの絡みやダンス。
ひとつひとつが、本当に心が持たないほど胸に迫りました。
そして静けさの中、こっちゃんがひとりで踊るラストダンス。
気づけば私、大階段の上から微笑みを湛えて降りてくるなこちゃんを、探していました。こっちゃんの目先の先にはなこちゃんが居るような気がした。
そんなとてつもない寂しさも感じましたが、同時に、こっちゃんがひとり静かに舞う姿を見て、大切な相手役舞空瞳さんと、これまで一緒に舞台に立ってきた星組の仲間たちと、そして「宝塚歌劇そのもの」と、心で会話しながら踊っているんだとも感じられたんです。
そう思った瞬間、こっちゃんは舞台上に右手をそっとあてていました。
「ありがとう」と、劇場に語りかけているように…
私も、やっぱり自然と涙が溢れていました。
エピローグという名の贈りもの
『エスペラント!』という名のレビューは、これまでのショーやレビューとは全く別物の位置づけだと感じています。
これまでのワクワクするようなキレキレのダンスや、超絶カッコいい熱いシーンはほとんどないけれど…
「エスペラント!」は「タカラジェンヌ礼真琴さん」が、宝塚という物語に添えた静かで美しいエピローグなのだと思います。
その最後の1ページには、ただただこっちゃんの“感謝”と“愛”と、そして“希望”が溢れていました。
ほかにも、ありちゃんや極美くんのことなど、書きたいことはいっぱいあるのですが、それはまた別の記事で…
タカラジェンヌ・礼真琴さんが紡いできた物語は、今、「レビュー」という形で静かに、美しく一章を結びつつありますね。
けれど、そのひとつひとつの場面には、トップスターとしての責任と誇り、そして、未来へ繋いでいこうとする確かな意志が宿っていました。
残り少ないこっちゃんのタカラジェンヌとしての舞台、名残惜しすぎますが…
その背中を信じて、光り輝くその姿を大切に見届けていきたいです。
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コメント
コメント一覧 (2件)
言葉の表現が巧みでうらやましく思いながら、いつも楽しく拝見しております!
私は個人的に、「エスペラント!」はうーん…でした。
naomiさんのご指摘された人形の場面も、同じようにもったいないなぁと感じてしまいました。
Mr.ブルーのお衣装がとても好きなのですが、本当にあの場面になこちゃんがいたらもっと素敵だっただろうなぁと想像してしまう自分がいて。うーん。
あと私は「秋の摩天楼」の、ことさんとほのかちゃんが腕を組む終わり方が一番もやっとしてしまいました。組むとしてもそこまでしなくていいよ〜(ToT)と心のなかで叫んでいました。
ほのかちゃんが嫌いなわけではなくて、単純にことなこの並びが好きすぎるんだと思います…
他のうーんとなった場面も、理由は全部ことなこの並びではないことの物足りなさや寂しさからで…二人が決めたゴールだから応援してるつもりでしたが、自分の中でことなこの運命的な並びがどれだけ尊いものだったかを実感しました。
「阿修羅城の瞳」がとても良かっただけに少し残念ですがことさんの男役最後のショーなので、ことなこの儚くて壮大な物語のエンディングを見守りたいと思います。
そしてことさんご自身、たくさんの壁を乗り越えられてきた方なので、最後まで幸せな気持ちで舞台に立たれることを心から願っています!
長くなってすみません(+_+)
おこめさん、コメント有難うございます…!
TAKARA座で綴っている言葉をそんな風に言ってくださって、恐縮ですがとても嬉しいです(*^^*)
おこめさんが仰ること、きっとことなこファンの多くの方々も感じておられるのかもしれません。
ことなこが並んで舞台に立ってくれていた尊さ…今また感じているひとりです。
礼真琴さんという、類稀なるタカラジェンヌのラストステージは、やっぱり「唯一無二」のカタチでしたね。
作品のテイストも内容も、そしてメンバーも、本当に唯一無二を見せてもらっています。
でも、この姿もこれからの宝塚の歴史にきっと、大きな影響を与えてくれるんだろうなぁと感慨深いです。
またぜひ、宝塚やこっちゃんへのお気持ち、ここに残してくださったら嬉しいです。