【東京・観劇旅2】星組『BIG FISH』感想:「礼真琴」の新境地

2024年6月16日(日)、あと1回の公演を残し星組 東急シアターオーブ公演『BIG FISH』は幕をおろします。

本来なら、明日の公演はライブ配信されるはずの千秋楽。

ですが、今回は、円盤化なし、ライブ配信なし、そしてスカステ放送もなし。

こんなにもひっそりと、静かに幕を下ろす公演になろうとは…。

実質、15日間、23公演。なんと限られた公演期間だったことでしょう。

そんな貴重な1回を観劇できたこと、本当に有難かったし、幸せだったと思います。

今日から数回に分けて、幻の舞台となった星組『BIG FISH』のことを書かせてください。

何度も繰り返してしまいますが、この作品は、もうどこにも残りません。

一部、スカイステージでダイジェストが流れることはありましたが、きっと全編を観られることは、もう二度とないでしょう。だからこそ、この作品に限っては、ネタバレどころじゃないくらい、記憶を残していきたい。思い出す限り、順不同になりますが全部書いていきます。

これから千秋楽公演を観劇なさる方もいらっしゃると思いますので、まだ内容を深く知りたくない!という方はご観劇後に読んでいただけたら嬉しいです(*^^*)

もし、今読んでくださっているあなたが、観劇したかったけれどもできなかった…としたら、少しでも星組『BIG FISH』の空気感、キャストの皆さんの姿や熱い想いが文章から伝われば嬉しいです。

もし、今読んでくださっているあなたが、観劇されたのなら、あの素晴らしい舞台の記憶の断片を互いに確かめ合いましょう。

はじめは、やっぱり大好きな礼真琴さんのことから…。

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目次

青年期から老年期までを演じ切った、エドワード・ブルーム:礼真琴

キャトルレーヴオンライン

礼真琴さんが、青年期から老年期までを演じた、主人公「エドワード・ブルーム」。作品のなかでは、多くのキャストが「エドワード」と親しみを込めて呼ぶ彼は、本当に「礼真琴」そのもののような素敵なお役でした。

何からお話しすればいいでしょうか。思い出す順に書いていきますね。

ビッグフィッシュのこっちゃんの「お芝居力」は群を抜いていた

こっちゃんの素晴らしさは、歌、ダンス、お芝居。よく3拍子揃ったトップスターと称されますが、今回、私が最も心を動かされたのは「お芝居力」でした。

もちろん、それと同じくらい歌もダンスも言葉にならないくらいほんっとーーーーーーーに素晴らしいものでしたが、こっちゃんの「お芝居力」は本当に群を抜いていて、何度泣かされたことか…(/_;)

忘れたくないから、思い出す順にランダムに書かせてください!

冒頭シーンに登場した少し背中を曲げてゆたゆたと階段を上っていくその人は、どこからどう見ても「グレーヘアの老人」。いい意味でオーラを消したような自然な歩き姿、振り返ったその人は、老年期の礼真琴さん。階段を上る姿の、老年期っぷりのリアルなことよ…!この年代の方をどれだけ研究したのだろう(/_;)川面に石を投げて跳ねさせるシーンは、プログラムにも素敵な写真がありましたね(*^^*)

キャトルレーヴオンライン
「BIG FISH」L判5枚組スチール写真/星組東急シアターオーブ公演『BIG FISH』(L判5枚組): ブロマイドオーダ... 「BIG FISH」L判5枚組スチール写真/星組東急シアターオーブ公演『BIG FISH』(L判5枚組)

老年期のこっちゃん、おじいちゃんなんだけれど、やっぱりヴィジュアルが文句なくカッコいい!!

老年期のこっちゃんの話し方が、何とも重厚感に溢れていて、今までのどの作品とも違って新鮮!!特に「語尾」の秀逸さに唸った…!語尾の響きまでもこだわりがあって、まるでアメリカ映画の超ベテラン声優さんの「吹き替え」のような上質感のある台詞回しが素晴らしすぎた!

老年期のこっちゃんの台詞回しで、最も研究と重ねてきた実力を感じたのは「固有名詞」を発する時。息子の名前「ウィル」エドワードの愛車「シボレー」、固有名詞の放ち方、発音にとてつもないこだわりと「アメリカ的」粋な雰囲気を感じて魅了された~!

やんちゃで可愛い青年期も、ほんのり色気も漂う壮年期も本当に素敵なこっちゃん。

青年期は、キャップを被って可愛らしくって声もちょっと高め、壮年期は落ち着いた雰囲気はありつつも、おどけたりして小粋な感じ。

そして老年期は声も低く重厚感もありつつ軽妙に。その演じ分けの見事なことよ…!(*’▽’)

そして演じ分けているけれど、語尾や話し方のクセはちゃんと全世代を通して「一貫」しているのがすごいんよね(*’▽’)

青年期は、ガールフレンドや友達とわちゃわちゃ、壮年期は息子のヤングウィル(茉莉那ふみさん)を相手に本当にパパみたいな優しさと頼もしさを見せてくれて、老年期は妻サンドラ(小桜ほのかさん)への愛情たっぷりに、可愛くでも時に迫力も感じる重厚感のあるおじいちゃん。

こっちゃんエドワードを短く形容すると、「軽妙かつ重厚」です。

場面展開の速さに混乱することなく、どの場面も見応えたっぷり軽妙にやってのけるこっちゃん。でも、その1場面1場面のクオリティが恐ろしく高くて重厚感を感じさせるんです。

礼真琴の「凄味」を感じた場面

それを特に感じたのは、やっぱり息子ウィル「極美慎さん」との場面。

こっちゃんエドワードが、かりんちゃんウィルと、親子の想いがすれ違い、激しく言い合う。こっちゃんもかりんちゃんも声を荒げて…このシーン凄くリアルで迫真の演技でした。

ほんと、凄かった…。

でもこっちゃんエドワードは無理のきかない身体、激しくせき込んで床にうずくまるシーンがあったんです。

この時のこっちゃんの声の出し方、怒り方が、まさに息子に言ってきかせるような「お前は何もわかっていない!!」と悲しさが滲んでいるような、そのこっちゃんの「老年期の声」が本当にリアルで泣けました(/_;)

悪夢のなかでさらにかりんちゃんと対決するシーン。

ここでは、軽快な音楽にのせて対決するので、悪夢なんだけれど楽しい!とこっちゃんも話してくれていましたね。ホント、そんな感じ。おじいちゃんのこっちゃんが悪夢の中で吊し上げられるのが可哀そうで…(/_;)

その姿も、いつもの精悍なこっちゃんなら(拷問系のね)それでも「拷問のされ方」もカッコいいじゃないですか( *´艸`)でも、この悪夢のシーンは拷問とまではいかないけれど、やっぱり追い詰められるような動きがあるんです。

で、この時のこっちゃんは何だか本当に「責め立てられているだけ」って感じで、弱々しくって何だか心がきゅっとなる感じ。…って伝わるでしょうか(;_;)

老人で、身体も弱っていて、さらに息子に責められて…っていう悲哀が滲むお芝居だったんですよね。

こういうの、本当に新鮮で「礼真琴の新境地だなぁ」と思った。

旅立ちのシーンまで、そしてその後

ラストに向かって、こっちゃんはどんどん弱っていく。でもそれと同時に、どんどん人としての逞しさや包容力を増していく。

小桜ほのかさんのサンドラの膝枕で安心した顔で眠ったり、残された時間が短いことを知り涙を流すサンドラと額を寄せて、手をにぎりゆっくりと「ぽんぽん」したり…。大丈夫大丈夫、と家族を安心させるように優しく言ったり…。

ラストに、こっちゃんエドワードの人生に大きくかかわった面々が集うなかでの歌唱「終わり方」は、どうしようもなく涙が自然と溢れてきてしょうがなかった。

シャツ1枚を着たこっちゃんは手を大きく広げて、人生賛歌のように満ち足りた、でも覚悟を感じる表情で劇場中に響き渡るほどの声量で歌うんです。

そして、その時はやってきました。

ベッドの上に静かに横たわるこっちゃんに、それまで自分から抱き着くことも躊躇して(ヤングウィル時代から)、手を握ることもほとんどなかった、かりんちゃんウィルが、こっちゃんの額に自分の顔を寄せて最期の時を噛みしめている様子に号泣してしまった…(;_;)

葬儀では、縁の人たちが「黄色の水仙」を墓地に投げるシーンがありました。

最後にかりんちゃんウィルが黄色の水仙を投げ入れ、参列してくれた方たちに気丈に挨拶をして…。

場面は変わり、こっちゃんエドワードが会いたくてたまらなかったけれど会えなかった孫(男の子)、そしてウィル夫妻(極美、星咲)、サンドラ(小桜)が川辺で楽しそうに過ごしているんです。

ピクニックのようにカジュアルな服装で、ウィルは魚釣りの仕方(こっちゃんエドワードに教えてもらったとっておきの魔法)を息子に伝える。

おとぎ話のような父親の話に反発していたウィルが、今度は自分が父の物語を息子に受け継いでいる。

そんな様子を、壮年期の姿に戻ったこっちゃんエドワードが、少し高い場所から満ち足りた表情で嬉しそうに眺めているんです(/_;)

ラストは冒頭で登場した「幸運のおまじない」石投げをするこっちゃんエドワード。もう家族には見えないけれど、こっちゃんエドワードも、確かに家族のいる川辺に居て見守っている。

息子や孫と一緒に石投げをして「やったー!成功だー!」と喜んでる…(;_;)天に旅立ってからも、家族は繋がっている、家族を大切に見守っている、そんな姿にもう涙が止まりませんでした。幕が下りてからも、しばらく動けないくらい感動に包まれていました。

心を感じさせるお芝居、それは礼真琴の真骨頂

こっちゃんのお芝居には全てに温かさと心が通っていて、どの場面もワクワクさせてくれて、じんわり心を温めてくれる。

人柄が全てこのお役に集約されていて、エドワードは本当に当たり役だと思ったし、「アメリカの片田舎の一人の男」をこんなにも魅力的に演じられるのは、やっぱりこっちゃんだからこそだなぁと感嘆しました。

改めて、礼真琴という人は舞台の神様に愛されているし、礼真琴という人は、どこまでも努力に努力を重ねてここまで持ってきているのだろうけれど、それをさも「軽く」やってのけているように見せられる技量とセンスが本当に素晴らしいなと感じます(;_;)

円盤にもどの映像にも残らないこと、悔しいし切ないけれど、反面、生観劇して思いました。

映像化されてももちろんこの作品は素敵だと思うけれど、果たして映像でこの「言葉にならない感覚」はどこまで伝わるだろうか…。お衣装も舞台装置も、いつもの宝塚みたいな「びっくりするほどの華やかさ」ほどではないんです。上質感はあるけれど、結構シンプルに感じました。

それよりも、キャスト1人1人の個性やお芝居力、歌唱力、そういうセンスに全てが委ねられているような、ある意味難易度がとてつもなく高い作品という感じなんですよね。

まさに、外部ミュージカルに出演している「男役礼真琴」を観ている感覚。

どのような宝塚作品でもやはりどこかに華やかで煌びやかさがあり、トップスターとトップ娘役がいて…という多くの宝塚歌劇の作品とは一線を画していて、キャスト全員が礼真琴さんを中心に、トルネードのように躍動する舞台。(もちろん、楽しくて笑ってしまうシーンもたくさんあって、舞台全体がファンタジックで美しかったです)

そして表情ひとつも見逃せないくらい繊細な空気感、お芝居の機微はこの場で、この瞬間しか感じられない…そんないい意味の緊張感にも満ちていました。

礼真琴さんが、宝塚歌劇団でゴールを迎える前に絶対この作品は挑戦したかったんだろうな、そして、この作品をきっかけにビッグフィッシュのキャストは、何段階も階段を上がったんだろうな、と今しみじみと感じています。

あぁ、やっぱりまた礼真琴さんのエドワードに会いたいな。でももう会えないと思うと切なくなります。やっぱり映像で、せめて声だけでも残らないもんか…と気持ちが行ったり来たりです(;_;)

この作品は、私の心の中にずっとずっと残り、舞台の断片を何度も何度も思い出すのだろうと思います。

別記事では、印象的だったキャスト、音楽や舞台装置のことなども書いていきます。

お付き合いいただけたら嬉しいです(*^^*)

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宝塚ファン歴20数年、福岡在住、このブログを運営しているnaomiです。

このブログは、アメブロで2011年に開設した「TAKARA座」を前身として、大好きな宝塚のこと、これまで観劇した作品について語っています。

筆者の詳しい自己紹介はこちら→https://takaraza.com/profile

コメント

コメント一覧 (2件)

  • アメブロでうまく送信できなかったので、こちらから失礼します。naomiさん、遠征お疲れさまでした(*^^*)
    先週の渋谷は暑かったですね。会場の熱気もすごく、グッズもほとんど売り切れで驚きました。
    歌はもちろん、アラバマストンプ等のダンスシーンも、お芝居のシーンも、こっちゃんというトップさんがいることで星組全体のレベルがすごいことになっているなあと感じています。
    確かにあの舞台の空気感は円盤や放送では全ては伝わらないかもしれないですよね…でももうあのエドワードやウィル、サンドラやカール達に会えないと思うととても寂しいです。
    音楽配信は嬉しいですが、これから勉強しないとやり方がわかりません…(笑)。ダウンロード数がすごいことになって「じゃあ実況CDくらいは出しましょうか」とならないかな?と期待しています。
    ルサンクを予約し、舞台写真もたくさん買いまし
    た(笑)。ルサンクに載るであろう脚本と舞台写真、ブログで皆さんが残して下さる舞台の様子をつなぎ合わせ、脳内再生できるよう頑張りたいと思います。また他のキャストさんの感想もお待ちしています!

    • あやさん、コメント有難うございます!アメブロで送信できなかったということでお手間をかけました!こちらに残してくださって嬉しいです(*^-^*)
      本当に暑い渋谷でしたが、劇場に入った時のあの街を見渡せる開放感と、エントランスの熱気が忘れられません!

      こっちゃんが中心に居て、登場するだけで舞台上がグッと締まり、クオリティがさらにアップする!
      今の星組の充実度を観ても、こっちゃんがどれだけ組子によい影響を与えているのかを感じられますね。

      こっちゃんエドワードはもちろん、どのキャストも全力で自分のお役を生きていて、本当に愛おしいです。
      私もルサンクの発売が楽しみでなりません!
      これから、その他キャストのことも書いていきたいと思います。
      お付き合いいただけたら嬉しいです(*^-^*)

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